キスはボルドーに染めて
 いつもは後ろに流している蒼生の髪も、今はさらさらと前にたれている。

 陽菜美は蒼生の艶のある髪をしばらく撫でていたが、そのまま頬や首筋、そして胸元までするすると手を滑らせた。

 蒼生は学生時代に、何かスポーツでもしていたのだろうか。

 そっと両手で触れると、胸板はがっちりとしていて(たくま)しかった。

 陽菜美はそっと身を乗り出すと、蒼生の胸元に顔をうずめて小さく口づける。

 すると、トクトクと波うつ鼓動のスピードが上がった気がして、陽菜美は不思議そうに顔を上げた。


 その途端、陽菜美は急にバッと身体を起こした蒼生に、反対にベッドに押し倒される。

「きゃ……」

 陽菜美の小さな悲鳴は、声になる前に蒼生のキスに塞がれた。

「まったく、陽菜美は(あお)るのがうまいな」

 蒼生は悪戯っぽくそう言うと、容赦なく陽菜美に甘いキスを降らせる。

「あ、蒼生さん、早朝です……」

 そんな声はすぐに熱い吐息にのみこまれて、陽菜美は朝からとろけそうなほどの愛で、埋め尽くされてしまった。
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