キスはボルドーに染めて
「朝食はトーストで良いか?」

 軽くシャワーを浴びた後、タオルを首にかけたTシャツ姿の蒼生が、キッチンから顔を覗かせる。

 バルコニーに並ぶプランターを見ていた陽菜美は、蒼生に借りた大きめのスウェットの袖を持ち上げると、にっこりとうなずいた。


「そのプランター、昔研修で行っていた葡萄農園の人たちがくれたんだ」

 外を軽く指さす蒼生に、陽菜美は再びプランターを振り返る。

「研修ですか?」

 密閉された窓を開けバルコニーに出ると、そこにはマンションにも置ける程度の小さなプランターがいくつか並んでいた。

 今は冬の時期だからか、葉が落ちているものがほとんどだが、中には一つぴょんと細い幹が伸びているものもある。

 陽菜美はしゃがみ込むと、まじまじとその幹を覗き込んだ。


「最初に配属されたのがワイン事業部だったから、時々国内の葡萄農園に研修で行ってたんだよ」

「葡萄農園! 羨ましいです」

「陽菜美ならそう思うだろうな」

 蒼生はくすりと笑うと、昔を懐かしむように顔を上げる。
< 139 / 230 >

この作品をシェア

pagetop