キスはボルドーに染めて
 だからこそ、まずは二人の今後のことよりも、蒼生の仕事を優先してサポートするようにした方が良いと陽菜美は考えている。


「うーん」

 陽菜美は両手を上げて一旦大きく伸びをすると、窓際に置いている鉢植えに顔を覗かせた。

 土から5センチほど伸びた細い幹が植えられたこの鉢植えは、蒼生のマンションから持ってきたものだ。

 まだ葉も開いていないこの幹は、どうやら蒼生も知らない内に成長していたようで、何の植物の幹かは全くわからない。

 でも陽菜美には、これが葡萄の幹のような気がしてならなかったのだ。


「まさか土に混ざってた種から出たってことか?」

 蒼生も初めは信じられない様子だったが、二人はその植物を植木鉢に植え替え、様子をみることにしたのだ。

 今では丸くえんじ色の小さい芽が膨らんできていて、二人はその葉が開くのを、今か今かと待ち望んでいる。


「もっと温かくなったら、どんな葉がひらくかなぁ」

 陽菜美はそっと指を伸ばすと、細い幹に優しく触れる。

 その途端、陽菜美は後ろから長い腕に抱きすくめられて、思わず「きゃ」と悲鳴をあげた。
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