キスはボルドーに染めて
「だいぶ芽が出てきたな」

 耳元で低く響くのは蒼生の声だ。

 どうも蒼生は陽菜美を驚かせようと、静かに部屋に入って来ていたらしい。


「おはよう、陽菜美」

 蒼生は抱きしめる手に力を込めると、そっと横から顔を覗かせる。

「あ、蒼生さん。おはようございます……」

 陽菜美はドキッとすると、恥じらうように下を向いた。

 こんなに毎日一緒にいるというのに、どうしても蒼生の甘い顔には毎回心臓が跳ねてしまう。


「陽菜美はいつまで経っても慣れないな」

 蒼生はくすりと肩を揺らすと、陽菜美の頬にチュと唇を当てる。

「もう、蒼生さんったら……」

 そんな陽菜美の声はあっという間に飲み込まれ、気がつけば唇は蒼生に奪われていた。

 静かな室内にリップ音が響き、朝から思わず深くなるキスに、陽菜美は慌てて蒼生から唇を離す。

「あ、蒼生さん、ここ会社です……」

 陽菜美が頬を染めながらうつむくと、蒼生はくすりと笑いながら陽菜美をぎゅっと抱きしめた。


 最近の蒼生は、社内でも隙あらば陽菜美を抱きしめるほど、日を追うごとに甘さが増してきている。

 陽菜美はその度に心臓を跳ね上がらせながらも、それでも蒼生が愛しくてたまらなかった。
< 147 / 230 >

この作品をシェア

pagetop