キスはボルドーに染めて
 扉を開けた途端、中に人影を感じた陽菜美は、はっと期待を込めて上げた顔を、一瞬で強張らせた。

「どうして……あなたが……?」

 やっとの思いで絞り出した陽菜美の声に、くすくすと笑い声を出したのは純玲だ。


「あら、随分と酷い顔ね。可哀想に。何かあったのかしら?」

 純玲は昨日よりもすっきりとした顔を上げると、綺麗にメイクされた口元を引き上げる。

 なぜ純玲が、朝から、ここにいるのか訳がわからない。

 陽菜美が身構えていると、純玲はゆっくりとこちらへ近寄ってきた。


「あなたには謝らないといけないわ。仮にも、今はあなたが蒼生のお相手だそうだから……」

 そう言葉を続ける純玲に、陽菜美は訳がわからず小さく首を傾げる。

「何が……言いたいんですか……?」

 陽菜美の硬い声にくすりと肩を揺らすと、純玲は陽菜美の目の前に立った。


「あら、昨夜(ゆうべ)のことに決まってるでしょう?」

「昨夜のこと……?」

 わざとらしく首を傾げる純玲に、陽菜美はいぶかしげな視線を送る。
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