キスはボルドーに染めて
 『俺は、陽菜美との未来に希望を持ちたい』


 そう言って、陽菜美を抱きしめた蒼生の瞳には、強い意志が込められていたはずだ。

 陽菜美はぐっと拳を握り締めると、次第に瞳を潤ませる涙を振り払うように、勢いよく顔を上げた。


「意味なんて、わかりません!」

 静かな室内に陽菜美の声が響き渡る。

 キッと睨みつけるように向けられた陽菜美の目線に、純玲は一瞬驚いたように目を丸くしたていたが、再びくすくすと肩を揺らして笑い出した。


「そう、わかったわ。じゃあ、あなたには教えてあげる」

 純玲はそう言うと、にっこりと笑ってソファに腰かけた。

「何を……ですか?」

 陽菜美は立ち尽くしたまま、そっと純玲を目で追う。

 純玲はしばし口を閉ざしていたが、キュッと口元を引き上げると、きつく鋭い瞳を陽菜美に向けた。


「結翔は、蒼生の子よ。三年前のあの日、蒼生と私が愛し合って授かった子なの」


 突然放たれた純玲の言葉は、静かな部屋に重く響き渡った後、陽菜美の心を突き刺して壊していった。
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