キスはボルドーに染めて
「蒼生はこれから、OTOWAホールディングスで仕事をするわ。結翔の将来のためにね」

「え……」

「蒼生はもう決断したの。一生を結翔のために捧げると……。悪いことは言わない。もう蒼生のことは忘れて頂戴。あなたは、あなたの身の丈に合った人を選ぶべきよ」

「……そんな」

 陽菜美の口から悲痛な声が漏れる。


 ――お父さまの話は、そのことだったの……? だから、今も私に連絡がないってこと……?


 愕然とする陽菜美の姿を見て、純玲はふふっと再び口元を引き上げた。

「今ね、蒼生が結翔を見てくれているのよ。やっぱり本当の父子(おやこ)ね。結翔もすぐに蒼生に懐いたわ……」

 ぼんやりと薄れる意識の中で、陽菜美の耳にそんな言葉が聞こえていた気がする。


 その後の事はよく覚えていない。

 全ての言葉をシャットアウトした陽菜美は、ただその場に、うずくまることしかできなかった。


「……陽菜美ちゃん?」

 杉崎に肩を揺すられ、陽菜美は再びはっと顔を上げる。

「ねぇ! 何があったの!? 蒼生から連絡は!?」

 杉橋の畳みかけるような声に、陽菜美は小さく首を横に振った。
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