キスはボルドーに染めて
 駐車場についた蒼生は、すぐに運転席に乗り込むとエンジンをかける。

 杉橋の話を聞く限り、陽菜美は手荷物も持たずに勢いで会社を飛び出している。


 ――だったら、陽菜美が行く先はきっとあそこだ。


 蒼生は静かに顔を上げると、アクセルに乗せた足を勢いよく踏み込んだ。

 高速道路に乗りスピードを上げながら、蒼生の脳裏に昨夜の純玲との会話が思い浮かぶ。

 蒼生は再び「くっ」と声を漏らすと、ハンドルを強く握り締めた。


「父親に呼ばれて、話をした」

 蒼生がそう言った時、純玲は心の底からホッとしたような息を漏らした。

「……そう、じゃあすべて聞いて、承知してくれたということね。結翔のために生きてくれると」

「どういうことだ!」

 蒼生は純玲の言葉を遮るように声を出す。

「どういうこと? そのままに決まっているでしょう? 結翔は蒼生の子よ」

「なぜそうなるんだ!」

 蒼生はやや大きな声を出した後、自分の気持ちを抑えるために息をついた。
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