キスはボルドーに染めて
「普通に考えれば、兄さんとの子だろう。なぜ俺の子だと……」

「違うのよ!」

 半ば叫ぶような純玲の声に、蒼生は戸惑いながら目線を泳がせる。

「結翔は……一輝の子じゃないの」

 声を震わせながら続ける純玲に、蒼生は驚いたように目を開いた。


「……兄さんの子じゃない?」

 蒼生は独り言のように、そうつぶやきながら、はっと顔を上げる。

「まさか、三年前のあの日の……」

「やめて!!」

 蒼生の言葉を拒絶するように、純玲の悲鳴にも似た声が響き渡り、蒼生ははっとすると口をつぐむ。

「結翔は蒼生の子よ。蒼生の子じゃなければいけないの……わかるでしょう?」

 純玲は涙に声を詰まらせながら蒼生に訴える。

 蒼生は固まったように動けないまま、純玲のすすり泣く声を聞いていた。


 どれほど時間が経ったのだろう。

 ようやく落ち着きを取り戻した純玲は、静かに口を開いた。

「一輝は蒼生から私を奪った負い目がある。だからこそ、蒼生の子であれば、許すと言っているわ。その意味をよく考えて」
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