キスはボルドーに染めて
「な、何を言っているの? 蒼生……」

 純玲は動揺したように声を震わせると、蒼生の前に出てこようとする。

「純玲、すまない。俺は今日、すべてを話そうと思う」

 蒼生がそう言い、純玲が愕然とした顔を上げた時、ガチャリと音を立てて入り口の扉が開く音が聞こえた。


「あらあら、皆さまお揃いで」

 皆が一斉に振り返った視線の先に、優雅な装いで現れたのは美智世だ。

 美智世はラベンダー色のスーツに身を包み、扇子で口元を隠しながら鋭い目線を細めた。

 美智世の登場に、陽菜美は驚いて蒼生を振り返る。

 すると蒼生は美智世が来ることを知っていたのか、静かにうなずいた。


「美智世はなぜここへ?」

 美智世から見れば兄である蒼生の父親の声に、美智世はほほほと口元を隠して笑い声を立てる。

「蒼生さんからね、ここに来るように言われたのですよ。何事かと思って来てみれば……」

 美智世は陽菜美の姿を見つけると、意味深に目元を細めた。

 美智世は一旦ぐるりと皆を見つめると、立ち上がっていた純玲にソファに腰かけるように促し、自分はその向かいに腰かける。
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