キスはボルドーに染めて
 しばらくして陽菜美は、今は杉橋と楽しそうに話をする蒼生の顔をそっと眺める。

 純玲が絡んだ一連の騒動については、OTOWAホールディングスだけでなくOTOWAグループ内でも完全に内容は伏せられている。

 OTOWineでも、純玲が訪ねてきた事を覚えている人は、もうほとんどいないだろう。


「兄さんと純玲は、離婚することになったらしい」

 あれからしばらく経った頃、蒼生がポツリと陽菜美に話をした。

 あの後、一輝と純玲は結翔のDNA鑑定を行った。

 そしてはっきりと、結翔は一輝の子ではないと判明したのだ。


 純玲があれだけの騒動を起こし、ましてや結翔の父親が一輝でないとわかった今、やはり二人は夫婦として関係を継続することはできなかったのだろう。

 ふいに結翔の可愛らしい笑顔が浮かび、陽菜美の胸がキュッと苦しくなる。


「でも兄さんは、結翔くんのために、できる限りの金銭的援助はすると言っているらしい」

 眉を下げた陽菜美を安心させるように、蒼生は小さくほほ笑んだのだ。
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