もう一人の私に出会った夏

1、事の起こり

真夏の太陽が、容赦なく照らし続ける頃、車は舗装されていない道を、ガタンゴトンと進む。

「わっ!」

タイヤが石に当たった瞬間、車に乗っていた千歳の身体が浮いた。

「大丈夫?千歳。」

母親の千穂が聞いてくる。

「うん…」

「千歳は、やせっぽっちだからな。」

兄の幸太が、からかってきた。

「違うもん。道が悪いからだよ。」

「悪くたって、俺はなんともないもん!」

「真似しないで!」

「真似しないで~」

こんな感じで、幸太と千歳のケンカは、いつも始まる。


「幸太、高校生にもなって、妹をからかうのはやめろよ。」

父親の宗太が、幸太に釘をさす。

「は~い。」

幸太はブスっとして、椅子にもたれかかる。

「まだ~?」

後ろの席から、一人飛び跳ねて遊んでる純太が、顔を出した。

「もうちょっとだからね。」

母が後ろを向いて答えた。

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