もう一人の私に出会った夏
そんな時、千歳の目に、向こうの山に集まる人々の姿が映った。

「あれ?あそこ、人がいっぱいいるよ。」

千歳が指さした方に、みんなは顔を向けた。

「本当だ。」

幸太も手を額に当てて、じっと見ている。

「あれ何?なんかしてんの?」

千歳が聞くと母が答えた。

「あれはね、植樹してんじゃないかな。」

「植樹って、木を植えること?」

「そう。あそこはダムを作るのに、木を切って開発したところだから、上流に新しい木を植えているのね。」

「へえ……」

「夏の間やっているのよ。時間があったら行ってみようか。」

「うん…」

千歳は暇な時間全てを、その光景を見るために費やした。


「ほ~ら、見えてきたぞ。」

父が指差した。

「わ~!」

幸太も純太も、窓から顔を出して興奮している。

山の間から見える一軒家。

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