もう一人の私に出会った夏
誰一人、千歳の声に耳を傾ける仲間はいなかった。

いつしか、クラスでも一人になりがちになって、そのストレスか、水泳のタイムも落ちていった。


「五十嵐さん、スランプ?」

先生が心配そうに、声を掛けてくれた。

「いえ……」

「タイム、落ちてるわよ。」

「えっ……」

先生がつけているタイム表を見て、千歳は画然とした。

選手の中で、タイムが落ちてるのは、自分だけだった。

「このままだと、代表も危ないわよ。」

先生はそう言い残すと、他のみんなのところへ向かった。


代表から落ちたくなかった。

みんなを、友達を見返したかった。

必死に練習したが、すればするほど、身体に疲れがたまっているのか、タイムはますます落ちて行った。

そして、夏休みの直前には、とうとう代表からも落とされてしまった。

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