スターリーキューピッド
彼らの会話を聞き流しながら、1人反省会を行う。

気遣い自体は、別に悪いことではない。

原因は、私がためらったせい。自分の気持ちを押し殺さなければ、友清くんに惨めな思いをさせずに済んだ。

私が、もっと──。


「……筋トレしたら、強くなるのかな」


助手席のポケットに入っている筋トレ雑誌を見て、ふと呟いた。


「え、筋トレ?」

「体を鍛えると心も強くなるって聞くじゃない? そしたら、多少のことでも怯まなくなるかなって」


何を言われても動じない、強靭な心を持てたら。堂々と立ち向かえる強さがあったら。

ナンパの人だって、追い払えたかもしれない。


「フカガミさんは、筋トレ歴は何年くらいなんですか?」

「社会人になって始めたから……10年、もう15年近くになるな」

「15!? ってことは、30代……」

「後半です。36歳です」
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