スターリーキューピッド
直角に頭を下げた。

細心の注意を払いながら言葉を選んだつもりだけど。

親子ほど歳の離れた相手で、なおかつ初対面。とんだ無礼者だと思われただろう。

でも、私のせいで争ってほしくなかった。誤解されて関係が悪化してほしくなかった。

一方的に責められている姿を、見たくなかった。


「顔を上げなさい」


頭上から優しい声がして、ゆっくり上半身を起こす。


「お見苦しいところを見せてしまい、申し訳なかった」

「いえ……っ。私のほうこそ、生意気な態度を、気分を害する発言をしてしまって、申し訳ありませんでした」

「害だなんてとんでもない。私としては、全力でぶつかってきてくれて嬉しかったよ」


怒鳴られてもおかしくないくらい、失礼極まりなかったのに。

まるで仏のような、穏やかな微笑みを浮かべている。


「最近の若者はデジタル慣れしているからか、情報に強くてな。私の部下も流行に詳しくて、よく面白い情報を教えてくれるんだ。ただその反面、あまり自分の話はしなくてね。会議中も他の人に同意することがほとんど。相手を敬ってくれてのことなんだろうが、できればもう少し語り合いたいなと……」

「わかるよゲンジぃ。でも、それアウトだから」
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