ハッピー・バースデー・トゥ・ミー
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役職付きの人間が重苦しい空気を吐き出しながら、ぞろぞろと会議室から出てきた。その中には眉間にシワを寄せた課長も混じっていた。
ひと目で分かる。あれはヤバいトラブルでも起こったな。
課長が自席を素通りし、こちらへ向かってくる。部署のメンバー全員がパソコンのモニターを注視しながらも、神経は課長の向かう先に集中させていた。
課長が足を止めた!
「森下、至急で対処が必要な案件ができたんだが、残業頼めるか?」
うっわー、私のところに来たよ……。
私を除く全員の緊張が一斉に解けるのを感じる。
「今緊急の仕事もないですし、予定も特にないですからいいですよ」
ため息が漏れそうなのを我慢して、そう返事をした。
予定を入れられなかったのだから、仕方がない。本当に終業後の予定はひとつもないのだ、今日という日にも。
結婚相談所に入会もしなかった。ダメ元で誰かに紹介をお願いすることもしなかった。
この半年というもの、心の中でヤバいヤバいと言っていただけで、有限の時間とお金を相も変わらず観劇に費やし続けてきた。
だからこれは当然の結果……。
「それは21時以降の残業も必要な仕事量ですか?」
社内規定で21時を過ぎての残業は、上司の特別な許可が必要になる。
「あー、どうかな。それは大丈夫だと思うんだけど……」
せめて21時になるまでには終わらせたい。
「分かりました。絶対に21時前に終わらせます!」
そうしてラストオーダーが21:30のビストロに行って、ひとりで乾杯してやるんだ。