アルトと北斗と水族館【アルトレコード】
 私はランチボックスを手に、ホログラムのアルトと研究所の北棟の中を通用口に向かって歩いていた。
 今日はアルトのリクエストで、中庭で一緒にお昼を食べることになっていたからだ。とはいってもアルトは実際には食べることはできないのだけど、そこはそれ、雰囲気だ。

 利発に育ったアルトは知的好奇心が旺盛で、生物への関心も強い。午後は中庭の花壇に育つ植物について調べて勉強してもらおうかな、とも思っていた。

 棟と棟の渡り廊下の出入り口にもなっている通用口にさしかかると、近くの部屋から端末を持った北斗さんが出て来た。そのまま通用口に向かっている。
 同じ方向に歩いているので、北斗さんは私たちには気付いていない。

「あ、ほくとだ」
 走って行こうとしたアルトは、すぐに足を止めた。

「ほくと、おんなの人といっしょみたい」
 振り返ったアルトの声に、私はどきっとした。

 見ると、北斗さんは南棟から来た小柄でかわいらしい女性研究員に話しかけられていた。なんだかよさげな雰囲気だ。

 私はとっさに近くの柱の陰に隠れた。
 アルトは意味もわからず私の真似をして隠れる。

「どうしてかくれたの?」
 小声でたずねるアルトに、私は少しかがんで話しかける。

「大人にはね、邪魔しちゃいけないときっていうのがあるの」
「なにがじゃまなの?」
 アルトはきょとんとしている。
 立ち止まって話をしていて、女性研究員は積極的に北斗さんに話しかけ、北斗さんがそれに返す形で会話が続いている。
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