繋いだ手、結んだ指先で。
読み終えてすぐに、手紙をテーブルの上に置いた。
北条くんの文字だとわかってからずっと目の縁で耐えていた涙はついに溢れて、ペンで書かれた文字に落ちたら滲んでしまう。
手紙に書いてあるように、今はまだ鮮やかな色を持って、優しくときに切なくわたしの周りに揺蕩う思い出も、いつかは薄れてしまうのだと思う。
それはとても、寂しいことで、でもそれを繋ぎ止めるために明日を拒むことを北条くんは望まない。
世界で一番好きな人に、幸せを願ってもらった。
この手紙に『好き』の言葉はないけれど、こんなにも、北条くんの想いを感じる。
燦々と降り注いで部屋の中を照らす太陽の光に、手を伸ばす。
何度も、北条くんと繋いだ手。
何度も、北条くんと結んだ指先。
この手に伝えてくれた、北条くんの気持ちを、忘れない。
箱の底に、いつか写真立てに飾っていた、小学生のころのわたしと北条くんの写真が入っていた。
裏面に『結衣ちゃんと』と書かれた写真を掴んだとき。
僅かに開いた窓から、風が舞い込んで桜の花弁を連れてくる。
足元に落ちたひとひらを指先に拾うと、じんわりと、知っているぬくもりが広がった気がした。
【繋いだ手、結んだ指先で。】


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