繋いだ手、結んだ指先で。

──────────────────


三瀬 結衣さんへ


まずは、謝らないといけないことがあります。

寄せ書きの返事を、いつか必ず渡すと言ったのに、直接渡すことは叶いませんでした。

言い訳になってしまうかもしれないけれど、この手紙と一緒に渡したかったから、あの手紙は渡さなかった。

もう二度と会えなくて、もう二度と伝えられないと思うと、言葉は溢れてくるのに何一つ文字にできなくて、この手紙を書いている今、結衣ちゃんと最後に会ってから1ヶ月が経ちます。

身体を起こすことができない日が続いたけれど、今日は何だかとても気分が良くて、今なら、心のままに書けると思う。

でも少しだけ、見栄を張ってかっこつけた文章になっていたら、そのときは笑ってください。


感謝や気持ちは、これまでに結衣ちゃんに伝えたことが、僕の全てです。

僕は、結衣ちゃんに本当にたくさんの力をもらって、生きてきました。

その力が足りなかったわけではなくて、現代医学の力が及ばなかったわけでもなくて、家族の支えが足りなかったわけでもなくて、何もかもが満ち足りていて、それでもどうにもならないことがあっただけの話だと思います。


中学生になって、僕が教室に行けなかった理由を、話したことがありました。

怖かった、それが一番の理由だけれど、僕はそれに打ち勝って、結衣ちゃんに会いに行くべきだった。

弱くて、情けなくて、立ち止まっていた僕に、会いに来てくれて、ありがとう。

何度伝えても、ここに書き残しても、足りない。

僕がいなくなったあとも、僕が結衣ちゃんを想うたびに、何か合図で伝えられたらいいのに。

思い出も、手のぬくもりも、僕の声も、いつかは結衣ちゃんの記憶の奥底に眠ると思う。

結衣ちゃんのこれからの日々が、明るく希望に満ちたものであるほど、僕との日々が薄れていくのだとしても、僕は結衣ちゃんが幸せであることを、一番に願います。


最後に、どうか。

繋いだ手、結んだ指先が

結衣ちゃんの力に、なりますように。


北条 理真


──────────────────

< 105 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop