繋いだ手、結んだ指先で。


わたしが話すのを待ってくれているのに、涙が止まらないから言葉を発する余裕がない。

ぐちゃぐちゃの頭の片隅に、北条くんが倒れる前に言いかけていたことが蘇る。

北条くんも同時にそれを思い出したのか、ああ、と小さく声を上げる。


「僕の話が、先だったね」


北条くんの顔が涙で歪んで見えた。


「三瀬さん、あのさ、僕……」
「しってるよ」
「……え?」


これだけは、先に言わなきゃいけないと思った。

手の甲で乱暴に涙を拭って、視界をクリアにする。

じんじんと熱く腫れぼったい目で、真っ直ぐに北条くんを見つめる。


「去年の秋頃のこと。季節の変わり目には特に頭痛がひどくて、わたし、このベッドで休んでいて……」


保健室にはわたしと立川先生だけがいた。

薬を飲んでも痛みが引かなくて、眠ることもできずに布団にくるまっていたとき、誰かが保健室に入ってきて、カーテンの外から声が聞こえた。


「誰の声なのかはわからなかった。姿は見えなかったし、立川先生も名前は呼ばなかったから」


立川先生と話していたその人は、泣いていた。

聞いていて苦しくなるくらいに、泣いていた。


「だから、4月にここで北条くんと会ったとき、あの人と声が同じだってことに気付いて……」


点と点が繋がった。

カーテンの向こうから聞こえたあの声は、泣いていたあの人は、北条くんだったんだって。

そのときに、気付いてしまった。

この声が、もしそうだとしたら、わたしは──北条くんに言えない秘密ができてしまう。

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