繋いだ手、結んだ指先で。
ぽろっと涙が零れるのと同時に、がたんと椅子が倒れる音がして、ソファが沈む。
「っ、北条、くん」
北条くんがソファに移って、膝と手をついていた。
深く俯いて、絞り出した声で言う。
「どうして、来たんだよ」
ひどく、辛そうな声だった。
「三瀬さんは、僕といたくないんだろ」
「それはちがっ……」
「来ないって言ったのは、三瀬さんだろ!」
いつもよりも強い口調。
肩は震えていて、言葉を区切る間にも荒く息をする。
わたしがこの間伝えたことは、間違っていたんだ。
しばらく相談室には、北条くんの元には行かないという選択から間違っていたとは思わない。
少なくとも、あのときはそうした方がいいって思ってた。
それでも、その言葉を受け取る北条くんがどう感じるのかまで、考えられていなかった。
胸が痛い。
切なくて、苦しくて、この気持ちを北条くんに伝えたくて。
頭の中に繰り返される、あの秋の、泣いていた北条くんの声をかき消す。
もう、この想いを止めることはできなかった。
「……すき、北条くんのことが、好き」
涙混じりの告白は、言葉にしてもすっきりなんてしなくて。
ごめんなさい、と呟いて、両手で顔を覆う。