繋いだ手、結んだ指先で。
苦し紛れに部屋を見渡すと、ベッドサイドに花瓶が飾られていた。
見慣れない青紫の花は、開いているものもあるけれどほとんどが蕾だった。
「あの花……」
「アガパンサス。つぼみが多いけど」
「これから咲くの?」
「もう少し咲くんじゃないかな。アガパンサスは、つぼみのまま落ちることもあるから」
花の話をするときはいつも通りの北条くんだったけれど、会話が途切れると沈黙が落ちる。
北条くんは先に視線を逸らしてしまったけれど、わたしは花瓶の隣に置かれたものを見つけた。
「ハーバリウム、飾ってくれてるんだね」
誕生日にわたしがプレゼントしたハーバリウムも、花瓶の隣に飾られていた。
北条くんはちらっとそれを見て、またどこを見ているのかわからなくなる。
窓から見える庭には、綺麗に手入れされた花壇があって、種類の違う低木が並んでいる。
きっと、季節の花を咲かすのだろう。
北条くんのための景色と、それを一番堪能できる部屋なのだと思う。
「わたし、北条くんに謝らないといけないと思ってた」
ぴくっと北条くんの肩が揺れるのがわかる。
わたしが目を逸らすことはあっても、北条くんがわたしを見ないことなんて今までなかった。
目が合わないって、寂しいんだ。
こっちを見てほしいって、思う。
「でも、そんなことを伝えに来たわけじゃなくて、わたし、ただ……」
誤解を解きたかった。
謝りたかった。
伝えたかった。
でも、そのどれよりも、何よりも。
「北条くんに……会いたかった」