アルト、お小遣いを学ぶ【アルトレコード】
「アルト、連帯責任って言う言葉を覚えるいい機会だよ」
「れんたいせきにん?」
 アルトは北斗さんの言葉をオウム返しにして私を見る。

「ふたり以上で責任を負うこと。ひとりの失敗の責任をみんなで背負うんだよ」
「せきにんってなに?」

「うん……簡単に言うと、自分でやったことの結果について受け止めて、悪かった場合にはきちんと謝るっていうことだよ」
 ざっくりと説明したけれど、これが「責任」の説明になっているようには思えない。教育って難しい……。

「そっか、わかった。ごめんなさい。ぼくが悪かったのに、先生も悪いことにされちゃったんだよね」
 アルトが素直に謝ってくれて、私はほっとした。

「いいよ、これからも一緒にがんばろうね」
 私が言うと、アルトは涙目でうなずいた。

 今回のことが彼の本当の学びとなるのは、もう少し先、自分でかみ砕いて理解できたときだろう。

「アルトにお小遣い制でお金を渡すのはしばらく延期しよう。欲しいものがあれば先生に言うようにね」
 北斗さんが言うと、アルトは悲しげに彼を見た。

「でも、そしたらほくとへのプレゼントが買えないよ」
「俺はいいよ。気持ちだけでうれしいからね」
 北斗さんは微笑を浮かべ、慰めるように画面の中のアルトの頭を撫でる。

「じゃあ俺は戻るから、あとは頼んだよ」
「はい」
私は返事をして、アルトと一緒に北斗さんを見送る。
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