ひと夏の星に名前をつけるなら
流れ星がまたひとつ、夜空を横切った。

私は息をのんで、その光を目で追った。

願い事はないけれど、それでもいいと感じた。


不思議と、役目を終えた星が希望の光のように見えた。

この夜にアルと二人でいつものように星を見れるだけで十分だ。

「……ねぇ、知ってる? あのデネブ、アルタイル、ベガの3つの星って、ギリシャ神話ではそれぞれ別の意味を持ってるんだよ」

私はふいに、口を開いた。

「へぇ、知らなかった。教えて?」

「例えばデネブが属する“はくちょう座”には、ゼウスが白鳥に化けて地上に降りたっていう神話があるの。誰にも気づかれないように、羽を纏って、夜に紛れるように」

「ゼウスって、神様の中でもけっこう自由奔放だよね」

「そうだね。でもその神様ですら、誰かに会うために姿を変えたんだよ。……それが意外で、好きなの」

「誰かに会うために、か」

彼ががぽつりと繰り返す。
その言葉に、私の胸もなぜか少しだけざわめいた。

「僕も何かに化けてたりして」

おどけたように彼は言う。

「かもね。だって“アル”って、本当の名前じゃないでしょ?」

「ふふ、するどい」

彼は笑った。
その笑顔はどこか静かで、風に溶けるような柔らかさがあった。

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