ひと夏の星に名前をつけるなら
星が流れた。

ふたりの間に言葉はなかった。
ただ夜が静かに、全てを包み込んでいた。

「……あ、流れたね」

彼が少しだけ嬉しそうに声を上げた。

私は何も答えずに、空を見上げ続けた。

願いごとをするには遅すぎた。

でも最初から気づいてた。
願ったところで叶わないってことくらい。

ただ、言いたかった。
“また会いたい”って。
“私が、来る理由になれたらいいのに”って。

でも——言葉にはできなかった。


彼が消えてしまいそうで、怖かった。

「……そろそろ帰ろうか」

彼の言葉に、私は頷いた。

ふたりで森を抜ける。
夜風が、夏の終わりの匂いを運んでいた。

言葉は少なかったけれど、歩幅だけはぴったりと合っていた。

彼とこんなにも長く歩くのは初めてなのに。

それが、ほんの少しだけ嬉しかった。

人の手が入った分かれ道で、私は立ち止まった。
< 21 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop