私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「梶井さん。姉さんは怒らせると怖いから気を付けてください」
笑いながら渋木はカフェのドアを開けた。
用は済んだから、もう帰れ、ということか。
「間違いなく、お前の姉だよ」
「そうですね」
渋木はにこりと微笑んだ。
女なら、喜ぶであろう笑顔。
だが、俺は背筋に寒いものを感じた。
俺が女なら絶対に避けるタイプだ。
裏切ったら、殺されそうだからな。
なにがクラシック界の王子だ。
曲者揃いの三人組め。
お前らは魔王だろう。
その極上の微笑みに俺は苦笑で返した。
「あいつに連絡するかどうかは俺が決める。今は距離を置くべきだと俺は思っている。俺と一緒にいていいことなんかなにもないからな」
あいつにとって、俺はきっと毒にしかならない。
また泣かせるだけだ。
それなら、いっそ近づかないほうがいい。
「梶井さん、あなた―――」
渋木小百里が口を開きかけたのを手で制した。
「もう何も言うな」
そう言って、店を出た。
青い空が広がり、雨でぬれた道路が乾き始めていた。
言われなくても俺が一番わかっている。
「嫌な奴らだな」
俺に自覚させるために呼んだのだ。
望未の持つ明るさや優しさに俺の方が彼女にすがっていたんだと 、 教えるために。
気づかないほうがよかった。
スマホを取り出して、ドイツ行きの航空券を予約した。
あいつのためにも―――俺はいないほうがいい。
笑いながら渋木はカフェのドアを開けた。
用は済んだから、もう帰れ、ということか。
「間違いなく、お前の姉だよ」
「そうですね」
渋木はにこりと微笑んだ。
女なら、喜ぶであろう笑顔。
だが、俺は背筋に寒いものを感じた。
俺が女なら絶対に避けるタイプだ。
裏切ったら、殺されそうだからな。
なにがクラシック界の王子だ。
曲者揃いの三人組め。
お前らは魔王だろう。
その極上の微笑みに俺は苦笑で返した。
「あいつに連絡するかどうかは俺が決める。今は距離を置くべきだと俺は思っている。俺と一緒にいていいことなんかなにもないからな」
あいつにとって、俺はきっと毒にしかならない。
また泣かせるだけだ。
それなら、いっそ近づかないほうがいい。
「梶井さん、あなた―――」
渋木小百里が口を開きかけたのを手で制した。
「もう何も言うな」
そう言って、店を出た。
青い空が広がり、雨でぬれた道路が乾き始めていた。
言われなくても俺が一番わかっている。
「嫌な奴らだな」
俺に自覚させるために呼んだのだ。
望未の持つ明るさや優しさに俺の方が彼女にすがっていたんだと 、 教えるために。
気づかないほうがよかった。
スマホを取り出して、ドイツ行きの航空券を予約した。
あいつのためにも―――俺はいないほうがいい。