私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「なんだろう」
うーんと関家君が唸っているとその背後から爽やかな柑橘系の香水をつけたスーツの男の人―――達貴さんが現れた。
「ショパンの猫のワルツかな?」
「あたりです。すごいですね」
弾き終わって、二人の方に顔を向けた。
関家君が悔しそうな顔で達貴さんを見た。
「ショパンは母が好きで、よく聴かされていたからね」
「子犬のワルツは有名なんですけど、私はネコのワルツの鳴き声のような音が好きでよく弾くんですよ」
「望未ちゃんらしい可愛い曲だよね」
「私らしいですか?」
「自由でなかなか捕まらなくて」
達貴さんは困ったように笑う。
「予想外なことをする。でも、目が離せないんだ」
関家君の目が達貴さんを見る。
「望未ちゃん。黙ってみていたけど、君にはもっと優しい男がいいと思う」
達貴さんはお兄さんのように私の頭をなでた。
私が傷ついていることをまるで知っているみたいに。
「梶井理滉は君の手に余る」
低い声にどきりとした。
梶井さんのことを諦め切れない私にやめろとは言わないけど、そう言いたい気持ちが伝わってくる。
うーんと関家君が唸っているとその背後から爽やかな柑橘系の香水をつけたスーツの男の人―――達貴さんが現れた。
「ショパンの猫のワルツかな?」
「あたりです。すごいですね」
弾き終わって、二人の方に顔を向けた。
関家君が悔しそうな顔で達貴さんを見た。
「ショパンは母が好きで、よく聴かされていたからね」
「子犬のワルツは有名なんですけど、私はネコのワルツの鳴き声のような音が好きでよく弾くんですよ」
「望未ちゃんらしい可愛い曲だよね」
「私らしいですか?」
「自由でなかなか捕まらなくて」
達貴さんは困ったように笑う。
「予想外なことをする。でも、目が離せないんだ」
関家君の目が達貴さんを見る。
「望未ちゃん。黙ってみていたけど、君にはもっと優しい男がいいと思う」
達貴さんはお兄さんのように私の頭をなでた。
私が傷ついていることをまるで知っているみたいに。
「梶井理滉は君の手に余る」
低い声にどきりとした。
梶井さんのことを諦め切れない私にやめろとは言わないけど、そう言いたい気持ちが伝わってくる。