私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
そう思って電話をかけた。

「渡瀬、何か用か」

『そちらこそ、私に用があるのでは?』

しばし沈黙。
なんだこいつ。
高い金を払って国際電話をかけてきたあげく、疑問形からスタートかよ。
疑問なのは俺の方だ。

「なに言っているんだ?用がないなら切るぞ」

『臆病者』

「誰が臆病者だ!俺に悪口を言うためだけに電話をかけたのか?切るぞ!」

『このままでいいんですか?」

「なんのことだよ」

はぁっと電話口で渡瀬がため息をつくのが聞こえた。
なんだ、その面倒そうな態度は。
つくづく失礼なやつだな、こいつは。

『あなたワケアリな女性と慈善活動のように付き合っていることは知っていましたが、私にはお互い本気にならないから付き合っているように見えました。つまり、ギブアンドテイクな恋愛だった』

渡瀬が淡々とした口調で話す。

『本気で人を好きにならないようにしてるのは大切な人を失う辛さを知っているからでしょう。あなたは大切な誰かを作ることに臆病になっているんですよ』

「黙れ」
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