私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
『黙りませんよ。どうせスランプなんでしょう?そして、それを誤魔化すのにアルコールを飲んでいた。そんなところでしょうね』
なぜ、わかるのだろう。
俺はワインを飲む手を止めた。
「お前、とうとう俺の盗撮を始めたのか?」
『そんな趣味はありません。あなたの私生活に興味はありません。私が好きなのはあなたの音だけですから。不本意ですが』
「一言よけいだ!」
なにが不本意だ。
たまには俺を手ばなしで褒めるとかないのかよ。
『その音を失くすわけにはいきません』
電話向こうの渡瀬の顔は見えない。
けれど、いつもより真剣なことはわかった。
「さすがビジネスライクな奴だな。それで、俺の精神状態を保つために俺の恋人もあてがおうとでも考えてるのか?」
『そうです』
「いや!?そこは言いようがあるだろ!?……ったく、俺は自分で相手くらい見つける。忙しいから、切るぞ」
こいつのマイペースな会話には付き合いきれない。
スマホを切ろうとした瞬間、渡瀬の言葉がそれを止めた。
『笠内望未が告白されてましたよ』
「誰に?」
『興味ないのでは?』
「いいから、教えろよ」
『若くて可愛い彼女は偏屈で性格がひん曲がったおじさんを忘れて、爽やかな家具店社長と恋に落ちたほうが幸せかもしれませんね』
家具店社長?
もしかして、あのカフェの客だろうか。
いや、それよりも―――
「誰が偏屈で性格がひん曲がったおじさんだ!」
『違うのなら、今から日本に帰ってきてお姫様をさらうくらいのことをしたらどうですか?このままだと、持ってかれますよ?梶井さんと正反対のさわやかイケメン社長に』
いちいちお前は俺を叩き落とさないと気が済まないのかよ!
本気で俺のことを嫌っているのではと疑いたくなるくらいだ。
「帰るわけないだろ!来週、コンサートなんだぞ。週末にはリハがある。あいつがイケメン社長と幸せになるっていうなら、なればいい。俺の知ったことじゃない」
溜息をつく声が聞こえた。
『過去の傷は消せません。でも、あなたは傷を持ったまま、一緒に生きていける相手を見つけたんじゃないですか?見つけられただけマシじゃないですか』
「……なんだ。お前にはそんな相手がいないみたいな口ぶりだな」
『いませんね。だからこそ、手ばなしてほしくない。そういうことです」
なぜ、わかるのだろう。
俺はワインを飲む手を止めた。
「お前、とうとう俺の盗撮を始めたのか?」
『そんな趣味はありません。あなたの私生活に興味はありません。私が好きなのはあなたの音だけですから。不本意ですが』
「一言よけいだ!」
なにが不本意だ。
たまには俺を手ばなしで褒めるとかないのかよ。
『その音を失くすわけにはいきません』
電話向こうの渡瀬の顔は見えない。
けれど、いつもより真剣なことはわかった。
「さすがビジネスライクな奴だな。それで、俺の精神状態を保つために俺の恋人もあてがおうとでも考えてるのか?」
『そうです』
「いや!?そこは言いようがあるだろ!?……ったく、俺は自分で相手くらい見つける。忙しいから、切るぞ」
こいつのマイペースな会話には付き合いきれない。
スマホを切ろうとした瞬間、渡瀬の言葉がそれを止めた。
『笠内望未が告白されてましたよ』
「誰に?」
『興味ないのでは?』
「いいから、教えろよ」
『若くて可愛い彼女は偏屈で性格がひん曲がったおじさんを忘れて、爽やかな家具店社長と恋に落ちたほうが幸せかもしれませんね』
家具店社長?
もしかして、あのカフェの客だろうか。
いや、それよりも―――
「誰が偏屈で性格がひん曲がったおじさんだ!」
『違うのなら、今から日本に帰ってきてお姫様をさらうくらいのことをしたらどうですか?このままだと、持ってかれますよ?梶井さんと正反対のさわやかイケメン社長に』
いちいちお前は俺を叩き落とさないと気が済まないのかよ!
本気で俺のことを嫌っているのではと疑いたくなるくらいだ。
「帰るわけないだろ!来週、コンサートなんだぞ。週末にはリハがある。あいつがイケメン社長と幸せになるっていうなら、なればいい。俺の知ったことじゃない」
溜息をつく声が聞こえた。
『過去の傷は消せません。でも、あなたは傷を持ったまま、一緒に生きていける相手を見つけたんじゃないですか?見つけられただけマシじゃないですか』
「……なんだ。お前にはそんな相手がいないみたいな口ぶりだな」
『いませんね。だからこそ、手ばなしてほしくない。そういうことです」