私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「素直な子供ならまだ可愛いんですが、ひねくれてますからね」

梶井さんは二人の中ではさんざんの評価だった。

「そんな男だけど、まだ好き?」

「はい……」

千亜妃さんは赤い唇の口角をあげた。

「うーん、やっぱり子供は素直が一番ね。そんないい子の望未ちゃんにいいことを教えてあげる」

「こ、子供!?」

「今、理滉はスランプよ。あんな状態のまま名門オーケストラで演奏したら、首席チェリストをクビになるかもしれないわね」

「スランプ!?クビ!?」

「唯一の取り柄であるチェロがなくなったら、人生終了ですね」

「人生終了!?」

二人はとんでもないことを言った。

「理滉の今を教えてあげたんだから、あとは頑張ってね」

車の窓が閉まり、二人が去っていった。

「え?ど、どういうこと?」

どうして私に梶井さんのことを教えてくれたのだろう。
去っていく車を追えるわけもなく、その車が見えなくなるまで見送った。
わけもわからず。
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