私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
『なるほど。昔からの女でしたか。失礼しました。梶井さんの女性関係に口出すつもりはありません。忙しいのでこれにて失礼します』

「待ってください。本当に誤解で―――」

ブツッと一方的にきられてしまった。

「違います!」

叫んだけれど、私の声は届かない。
女性とのトラブルは梶井さんにとって日常茶飯事なのだろうか。

「マネージャーって言ってたよね」

しょんぼりしながら、掃除用具を片付けてカウンターの席に座った。
フルーツパフェが鎮座している。
メロンとリンゴ、パインにバナナ。
たっぷりのフルーツにヨーグルト風味のアイス。
さっぱりしていて美味しい。

「穂風さんの優しさが染み渡る……」

やわらかくなったアイスをスプーンで大きくすくった。
早く食べないと完全に溶けてしまう。
それにしても困った。
きっと梶井さんはジュースをかぶってジャケットを脱いだ時、スマホを落としてしまったのだろう。
つまり、私のせい。

「どうしたらいいのかな」

じぃーっとスマホを見つめる。
でも、どこに住んでいるかわからない。
そうだ。
知り合いの人に電話すればいいのでは?
< 13 / 174 >

この作品をシェア

pagetop