私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
梶井さんはタイを背後の椅子に投げ捨てた。
私が話すまで、そこから動かないつもりだろうか。
もうすぐコンサートなのに!?
焦って、私が口を開いた。
思っていることを全部言わなきゃ!

「私は梶井さんじゃないと嫌なの!他の人とは絶対付き合わないからね!最後まで梶井さんは私のこと愛してくれきゃだめ!」

『なんだ、その逆プロポーズは』

気が付くと梶井さんが笑っていた。
あ、あれ?
プロポーズ?

『なにを言うのかと思ったら。結婚しようって話か』

「ち、ちがっ……!」

『わかった。最期まで一緒にいよう』

そうじゃないって、そうなんだけど。
結婚をおねだりしたわけじゃないのっ!
そう言おうと思ったところで、邪魔が入った。
画面の向こうで梶井さんの名前が呼ばれる声がした。
梶井さんがドイツ語で返事をする。
そして、またこっちに顔を向けた。

『望未。来週、帰国した時、お前の親に挨拶するから、そう伝えておいてくれ。俺は今からリハがあるからな」

「あ、うん、コンサート頑張って……」

『俺はお前といい加減に付き合ってない。心配するな。ちゃんと指輪は買っておく』
< 146 / 174 >

この作品をシェア

pagetop