私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「ちゃんとわかってるけど……キスなんかするから」

勘違いして期待してしまう。
私はただのカフェ店員。
向こうは世界的に有名なチェリスト。
付き合ってる女性は掃いて捨てるほどいて、梶井さんにしたらキスなんて挨拶がわりみたいなもの。
でも、向こうが私を見つけなくてもいいの!
私は純粋にコンサートを楽しみにきただけなんだから!
梶井さんはドイツに拠点を置いている。
だから、これは久しぶりの国内コンサートだった。
コンサートの発表から、私はずっとこの日を楽しみにしてきた。
私はただのファン。
そう自分に言い聞かせて、パンフレットをもらってホールに入った。
私の席は一階の前の方のはじっこの席。
人気があるから、いい席はとれなかった。
梶井さんのコンサートは熱心な女性ファンが多い。
それもファン層は年齢層が高めでお金を持ってる人ばかり。

「そういう人を集めてしまう体質なのかも……」

さっと席を見渡してもクラシックコンサートになれている年配の方が多い。
マダムのパトロンと戯れる梶井さんを思い浮かべた。
とても絵になる。
それくらい梶井さんは色気がある。
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