私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
明日からは浮かれず、ちゃんとした日常を送らなくちゃ―――

「ちょっと!理滉(みちひろ)!危ないでしょ」

車のクラクション音と女の人の声。

「危ないのはこいつだ」

「か、梶井さん!?ホンモノ?」

「ニセモノがいるなら、通報するから教えろよ」

さっきまで舞台にいたはずの梶井さんが私と話している。
これは夢?
ううん、夢じゃない。
梶井さんの隣には女王様のような美女がいた。
カフェにいた女の人とは別の人だとすぐにわかった。
暗い感じは一切なく、堂々とした雰囲気に赤い口紅に黒のワンピース、長い黒髪。
胸も大きい。
美女は髪をかきあげ、私を見る。
王様みたいに助手席にいるのは梶井さんで二人の関係がなんなのか、わからないけど、恋人と言われても違和感がない。
コンサート後に二人で車に乗っているってことは親しい仲だということは間違いない。

「おい、ウサギ。なんだその格好は」

「なんだって……ワンピース……」

「三月の夜に半袖とか、お前は風にも負けない小学生男子か?」

「ジャケット、忘れちゃって」

また車のクラクションが鳴った。
後ろから来た車だった。
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