私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「じゃあな、ウサギ。俺はしばらくこっちで仕事の予定はない。当分の間は向こうにいる」
梶井さんの活動拠点はドイツで次に帰ってくる時までカフェ『音の葉』に現れない。
そう私に告げているんだとわかった。
「送ってくれてありがと……」
「ウサギ、俺がいなくても泣くなよ」
「泣くと思う」
「なんだ、それ」
「梶井さんがいなかったら、私は泣く!」
「泣かれるのは嫌いだって言っただろ?」
梶井さんは赤い目をした私の顎をつかみ、キスをした。
まるで、麻薬のよう。
一度口にしたら、忘れられなくなる。
このキスは。
いなくなった後も唇だけが熱い。
キスはこぼれた涙の味がした。
梶井さんが嫌いな涙の味が。
冷たい春の夜風がシフォンのスカーフを揺らした。
車を見送った私の目に桜のつぼみがうつり、三月が過ぎていくのを感じていた―――
梶井さんの活動拠点はドイツで次に帰ってくる時までカフェ『音の葉』に現れない。
そう私に告げているんだとわかった。
「送ってくれてありがと……」
「ウサギ、俺がいなくても泣くなよ」
「泣くと思う」
「なんだ、それ」
「梶井さんがいなかったら、私は泣く!」
「泣かれるのは嫌いだって言っただろ?」
梶井さんは赤い目をした私の顎をつかみ、キスをした。
まるで、麻薬のよう。
一度口にしたら、忘れられなくなる。
このキスは。
いなくなった後も唇だけが熱い。
キスはこぼれた涙の味がした。
梶井さんが嫌いな涙の味が。
冷たい春の夜風がシフォンのスカーフを揺らした。
車を見送った私の目に桜のつぼみがうつり、三月が過ぎていくのを感じていた―――