私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
小百里さんに張り切って返事をした。
ランチタイムが終わるとお店はいったんクローズする。
その間、休憩をしてディナータイムに備える。
フロア担当の私はこの時間にピアノの先生をしていて、今日のレッスンの予約は関家君の一人だけ。
カフェ『音の葉』が入っているビルの二階部分にピアノ教室を開いていた。
アップライトピアノを置き、防音もバッチリ。
教室で使用しているピアノは小百里さんのピアノで、話を聞くと小百里さんは菱水音大のピアノ科の卒業生だった。
私の先輩だと働き出した後に知った。
小百里さんはピアニストになればいいのにってくらい上手だけど―――

『弟の方が上手でしょ。だから私はね』

―――と、言っていた。
小百里さんの演奏はすごく素敵なのにもったいない。
上の階の練習室へ行くためにカフェから出て、ビルの正面右側の入口へと向かう。
デザイナーが建てたというビルはおしゃれでガラス張り。
一番上の階は小百里さんや穂風さんが住んでいる居住スペースで、上階は賃貸マンションになっている。
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