私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
ピンク色のババロアに白い生クリームとイチゴ、とろりとしたイチゴソースが飾られ、ミントが飾られていた。

「試作品。日替わりのデザートにつけるから二人とも感想をきかせてよ」

「わぁ。ありがとうございます」

スプーンをいれるとイチゴの甘酸っぱい香りが漂った。

「おいしいです。穂風さん」

「爽やかなイチゴの味がいいわね」

「それはよかった。それじゃあ、厨房に戻るよ。今日はピアニストの渋木さん夫婦がくるからね。お客さんがいつもより多いだろうから、仕込みの量を増やさないと」

今日の午後からは小百里さんの弟さん夫婦がピアノを弾きにきてくれる。
近所のマンションに住んでいて、たまにこうして弾きにくる。

「そうね。唯冬(ゆいと)がくるなら、仲のいい二人もついてくるかもしれないし。外の席も作っておきましょうか」

「手伝います」

窓を開けて外にテーブルや椅子を並べて席を増やす。

「今日、集まる方達って有名な人ばかりですよね。常連さんしか知らなくていいんですか?」

ピアニストの渋木夫妻とバイオリニストの陣川(じんかわ)さん、チェリストの深月(みづき)さんが来ると聞いていた。
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