私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
弾き終わった千愛さんをテーブル席で待っていて、労う唯冬さん。
お互いに想い合っているのだと微笑み合う二人の姿を見て思った。
なんて素敵な夫婦なんだろう。
「小百里さん。弟の唯冬さん。とても優しい人じゃないですか」
小百里さんは私の言葉に首を横に振った。
「千愛さんにはね。味方には甘いけど、敵には容赦ないから」
頬に手をあてて、ふうっと小百里さんはため息をついた。
千愛さんのラ・カンパネラで盛り上がった後は陣川さんのカルメン。
情熱的で鮮やかな色彩を放つ音。
「大変。聴いている場合じゃなかった」
ちゃんとお水を入れて回らなくちゃ。
テーブルを回りながら、少なくなった水を足していく。
「ありがとう」
お礼を言われて会釈し、顔をあげると、そのお客さんは私をじっと見つめていた。
「名前、なんて読むのかな?」
これって、ナンパ?
最近、よく来るようになった常連の若いサラリーマン。
さわやかで優しい印象のある人だ。
いつも一人でランチやディナーの時間にきて、難しそうな本を読んでいた。
「……っと、失礼だったよね。これ、俺の名刺」
お互いに想い合っているのだと微笑み合う二人の姿を見て思った。
なんて素敵な夫婦なんだろう。
「小百里さん。弟の唯冬さん。とても優しい人じゃないですか」
小百里さんは私の言葉に首を横に振った。
「千愛さんにはね。味方には甘いけど、敵には容赦ないから」
頬に手をあてて、ふうっと小百里さんはため息をついた。
千愛さんのラ・カンパネラで盛り上がった後は陣川さんのカルメン。
情熱的で鮮やかな色彩を放つ音。
「大変。聴いている場合じゃなかった」
ちゃんとお水を入れて回らなくちゃ。
テーブルを回りながら、少なくなった水を足していく。
「ありがとう」
お礼を言われて会釈し、顔をあげると、そのお客さんは私をじっと見つめていた。
「名前、なんて読むのかな?」
これって、ナンパ?
最近、よく来るようになった常連の若いサラリーマン。
さわやかで優しい印象のある人だ。
いつも一人でランチやディナーの時間にきて、難しそうな本を読んでいた。
「……っと、失礼だったよね。これ、俺の名刺」