私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「梶井さんが欲しいなら、死ぬ気で行かないとあなたレベルでは返り討ちにあいますよ」

「死ぬ気で行けば、手に入りますか?」

渡瀬さんは私をじっと見た。
『本気ですか?』という目。

「傷つけられますよ」

そんな予感はしていた。
この恋はきっと簡単にはいかないんだっていう予感。
でも私は―――

「梶井さんがいいです」

「そうですか。健闘を祈ります」

渡瀬さんは相変わらずの無表情。
だけど、少しだけ笑ったような気がした。

「それでは、次の予定があるので失礼します」

渡瀬さんはカツカツと力強いヒール音を鳴らして去っていった。
テーブルの上のフォークは使われずにそのままで、気づいたら達貴さんはランチを終えて帰った後だった―――
< 60 / 174 >

この作品をシェア

pagetop