私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
そんな言葉が返ってきて、がっくりと私は肩を落とした。
そう……そうだよね。
確かに私は梶井さんに関係ない存在だよね……

『渡瀬!きいてるのか?俺にわざわざ言うことじゃないだろ?気にしてると思っているのか?なにがさわやかなサラリーマンだ」

声がイライラしている。
それが子供みたいで可笑しかった。
ずっと私の前じゃ大人みたいだったのに。

「梶井さん。もしかして、気にしているんですか?」

『ウサギ!?いつから聞いていたんだ?』

「私の名前。ちゃんと覚えていたんですね」

梶井さんが静かになった。
渡瀬さんはぱたんとスケジュール帳を閉じる。
スマホを私から受け取ると、淡々とした口調で言った。

「梶井さんは五月に数日間だけ日本にいますよ。運が良ければ、会えるかもしれませんね」

『おい!渡瀬!勝手に俺のスケジュールを教えるな!』

騒ぐ梶井さんをものともせず、渡瀬さんは問答無用でピッと通話を切る。

「梶井さんは好きでもない相手にキスするほど色情魔ではありません」

「は、はあ」

色情魔ってなに?
そっちが気になって頭に入ってこなかった。
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