私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
関家君はちょっと不満そうだった。
その顔が小学生みたいに見えて笑ってしまった。

「じゃあ、関家君。来週の水曜日の四時ね」

「先生はきびしーなー」

「え?厳しい?優しいでしょ?」

「そうじゃなくて―――」

私と関家君が話していると店のドアが開いた。
常連客の達貴(たつき)さんだった。
私を見つけると手をあげて微笑む。
会釈して返すとちらりと梶井さんが私の方に視線を向けたような気がした。
―――まさかね。
水をいれたコップを用意して達貴さんが座った席まで運ぶ。

「望未ちゃん。忙しかった?」

「いえ。まだ忙しい時間じゃなかったので平気です」

「あの高校生の子は?」

「ピアノ教室の生徒なんです。あとは小学生の女の子一人だけで。もう少し増えてくれたら嬉しいんですけど」

小学生の女の子は店内のピアノ教室生徒募集中の貼り紙を見てやってきた。
ピアノを習いたいという小学生の女の子がいるとカフェのお客さんが紹介してくれた。
カフェの仕事もあるけど、本業はピアノだから、もう少し増えてくれたらなぁと思っていた。

「そうか。俺も知り合いに声をかけてみるよ」

「え!?いいんですか?」
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