私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「傘があるでしょ」

窓の外はどんより曇り空。
菜湖ちゃんはだらけた妹に容赦ない。
それに二十三歳の私をつかまえて『おつかい』とはどういうことなのだろうか。

「牛乳、少なかったから 買い足しておきたいの。コンビニの牛乳でもいいから買ってきて」

食費用のお財布から菜湖ちゃんは千円だして、カウンターテーブルに置いた。
小さい頃から菜湖ちゃんに面倒をみてもらっているせいか、逆らえない。

「おやつは一個までね」

「うー……わかったよ」

しぶしぶ起きて、グレーのパーカーを羽織った。

「いってきまーす」

「気を付けてね。私は会社に行くから、鍵を開けて入ってね」

「わかったよー」

鍵をシャツワンピースのポケットにいれた。
今日はカフェ『音の葉』の定休日だけど、明日もお休み。
連休でとれなかったお休みを今週、まとめてとることになった。
小百里さんは家でのんびりして、穂風(ほのか)さんは友達と食べ歩きするって言っていたなぁ。
結局予定がないのは私だけ。
そして、そんな私は朝から出勤する人達に紛れて牛乳とおつりでお菓子を買う予定です。
千円札を眺めて、ため息をついた。
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