私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
確かに子供扱いされても怒れないかもしれない。
おつかいじゃね……
大人になるって難しい。
スニーカーをはいて玄関を出た。
自宅近くにある大きめの公園の中を抜けるとコンビニまでの距離をショートカットできる。
近道をしよう。
そう思って、公園の入り口に目をやると黒いシャツをきた男の人が公園へ入っていくのが見えた。
背中だけで誰なのかわかってしまった。
梶井さんの背中は何度も見ていたからすぐにわかる。

「は、はやい」

足の長さが違うから当たり前だけど、なかなか梶井さんに追いつけなかった。
気のせいじゃなかったら、いつも私は梶井さんの背中を追ってるような気がする。
梶井さんは公園の中に入っていき、鬱蒼とした木々の小径を歩く。
曇っているのにどうしてこんな場所へ?
日向ぼっこには不向きな気がした。
梶井さんは雨が降りそうだと思ったからなのか、東屋の前で足を止めた。
やっと追いつけると思ったけれど、そこから近づけなかった。
いつもと違う―――私のことをからかったり、笑ったりする梶井さんの姿はそこにはなく、重苦しさを感じ、どこか気だるげで疲れているようにも見える。
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