私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
頭を差し出した梶井さんの髪をぽんぽんとタオルで叩きながら、濡れた髪を拭いた。
梶井さんはただ目を伏せているだけなのに近くてドキドキする。

「名前は?」

「え?」

「君の名前」

笠内(かさうち)望未(みみ)です」

ぶはっと梶井さんは噴き出した。

「ウサギちゃんか」

「ウサギ!?」

「小学校の時、学校で飼っていたウサギの名前がミミだった」

男女のいいムードになるはずが、そんな空気は全部吹き飛んでいった。
ウサギによって……

「あー、久しぶりに笑ったな。いやー、ウサギか。なるほど。ぴったりだ。高校生なのにバイトするなんて偉い、偉い」

ぽんぽんっと私の頭を叩く。
私の頭を叩いていた方の腕をガシッとつかんだ。

「ん?」

「私は今年で二十三歳だよっ!」

「は?嘘だろ?いいとこ、ぎりぎり十六歳だぞ」

その言葉がグサッと突き刺さった。
確かに私は童顔だって言われることはあるよ。
こう見えても日本人形みたいだねとか、着物が似合うねとか褒められるんだからね!?
それとも、アレですか。
褒められているって思ったのは私だけで、周りは七五三の着物を褒めたりするノリだった―――?
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