私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
どういう意味?と思いながら、エレベーターに乗った。
二人だけのせいか、いつもより梶井さんの甘い香りが強く感じる。
梶井さんの濡れた髪からぽたりと落ち、首筋につたうのが目に入った。
色っぽくてドキドキして、目をさっとそらした。
確かに私のような人間を入れたら、危険かもしれない。
エレベーターは部屋のある階で止まった。

「タオルと傘を貸すから待ってろ」

部屋の入り口で待たされて、当たり前だけど入れてくれなかった。
廊下の壁に寄りかかって、パーカーのポケットに手をいれると入っていたはずの家の鍵がなかった。

「あ、あれ!?」

ごそごそと中を探っても出てこなかった。

「どうした?」

タオルを持って出てきた梶井さんが私の慌てた様子に気づいた。

「家の鍵なくしたみたい」

「は!?」

「公園で落としたのかな……」

梶井さんはしばらく考えて、濡れた自分の髪をかきあげた。

「入れ」

「いいの?」

「風邪でもひかれたら、俺のせいにされそうだからな」

ドアを大きく開けて私を部屋に招き入れてくれた。
ただし、ものすごく嫌そうな顔で。

「そんな嫌そうな顔しなくても」
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