私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
挑発するような目。
私に『やめてください』と言わせようとしていることはわかっていた。
ぐっと言葉を飲み込んで、その憎らしい顔をした梶井さんに噛みつくようにキスをした。
それ以上、見せられたくなくて。

望未(みみ)。もっと深くキスしろよ」

こちらからのキスのはずが、角度を変え、深く何度も貪られ、息を乱されて、頭の中が。
完全に私は梶井さんに支配されてしまっていた。
ただ一方的に獣に喰われるだけの存在。

「ふっ……あ……」

快楽に流され、乱れる私を梶井さんは冷静な目で見おろしているのがわかる。
反射的に逃げようとした体をソファーに押し付けて言った。

「望未。覚悟して男を誘ったなら、自分から逃げるなよ」

「わ、わかっ……てる……」

怖い―――梶井さんの闇は私が思うより深い。
孤独も、ずっと。
ここで逃げたら、梶井さんは二度と私を近寄らせてはくれない。
そんな気がして、息を吐き、梶井さんの肩に額をあてた。
もういっそ、与えられる毒に溺れてしまえばいい。
このまま―――なにも考えずに。

「もっと声だせよ」

こんな梶井さんは初めてだった。
優しさなんてない。
そこにあるのはただ快楽だけ。
これじゃ、他の人と同じ―――ただその場だけのお互いの傷をなめあうような関係だった。
傷を持つ人間しか、梶井さんのそばにはいられない。
だから、私のこの恋は傷だらけになるのは最初から決まっていた。
傷がない人間を梶井さんは愛せない。
この恋によって、私はたくさん泣くだろうって思っていた。
激しいキスに答えるように泣きながら、その体にしがみついた。
自分の体が震えた―――怖いと思った。
それがわかるのか、梶井さんは指を足の間に滑り込ませた。

「……っ、あっ……や、やぁっ……や、やあっ」

怖くなって、体を逃がし、梶井さんの肩を噛んでしまった。
赤くなった歯の痕を梶井さんが冷えた目でみる。

「梶井さ……ん……私……ご、め」

「いい。なれてる」

思わず、抵抗してしまった私は、梶井さんの肩を噛んでしまった。
梶井さんさんは赤くなった歯の痕を冷えた目で眺めていた。
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