私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「本当の私はね、嘘つきで怖い人間なの」

「そんな女神様みたいな顔で言われても説得力ないです」

「あら、そう?はい。ココアをどうぞ」

ふふっと小百里さんは笑って、ココアが入ったコップを手渡してくれた。
焼いたマシュマロが二つも入ったココア。
とろりと溶けて、ココアの中に沈みそうになっていた。

「甘くて美味しいです」

「そう、よかった」

梶井さんのところで飲んだコーヒーは苦くて最後まで飲めなかった。
けれど、このココアは最後まで飲める。
甘くて美味しい。
そして、ほっとする。
私は梶井さんにそんな存在でありたかった。
困った顔や苦しい顔をさせるような存在じゃなくて。
今、梶井さんが眠れているといい。
せめて、眠っている間だけでも彼に安らぎを。
そう願わずにはいられなかった。
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