アルトの夏休み【アルトレコード】
***夏休み五日目 8月15日
 北斗は翌日もアルトのいる部屋で仕事をしたが、しょっちゅうアルトに話しかけられた。

「ねえ、北斗」
「なに?」

「先生、いつ帰って来るかな」
「明日だよ」
 北斗の返事は簡潔だ。手はずっとキーボードを打っている。

「そんなのわかってるって。明日のいつかなってこと!」
「さあ、それは知らないな、聞いてみたら」

「アンテナが壊れたから無理じゃん」
「そうだったね」

「先生、もうこっちに向かってるかな」
「さあ、それはわからないな」
 数字の打ち込まれた画面を見ながら、北斗が気のない返事をする。

「ねえほくと、ぼく、ちゃんと宿題やったよ。ほら、こんなに漢字の書き取りしたの」
「すごいね」
 アルトはノートを見せるが、北斗はちらりとも彼のほうを見ない。

「北斗、ちゃんと聞いてる!?」
「聞いてるよ」
「だったらちゃんと見てよ!」
 大きな声に、ようやく北斗はアルトを見た。

 アルトは怒った顔をして、ノートを見せ付けている。
「もう少し丁寧な字で書いた方がいいね」
 北斗のダメ出しに、アルトはむっとしてノートを放り出す。
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