紅椿の契り~後宮に咲いた偽りの華~
三、血の契り

 翌朝、天焉は指に巻かれた小さな紅の紐を雅美に見せた。

「これは“血の契り”だ。俺の体内に、神の呪印が宿っている」

「呪印……?」

「この紐を結べば、お前の命は俺と繋がる。つまり……お前が死ねば、俺も死ぬ」

「な、何それ……!」

「それでも、俺は望む。お前と、すべてを共有することを」

 雅美の手に、紐が差し出される。

「選べ。逃げるか、俺と地獄まで堕ちるか」

「…………」

 雅美は、震える手で――その紅の糸を結んだ。

「……私はもう、嘘を突き通すことよりも……」

「俺のものになるほうを、選んだな?」

「……っ、うるさい」

「ふ、可愛いな」

 そのまま天焉は、雅美を抱き寄せて――
 朝日が昇るまで、何度も何度も、彼女の名前を囁いた。
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